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-1斤目- 平和を願い、ウクライナのパン文化に触れる

ロシアによるウクライナ侵攻がはじまってから、連日つらいニュースが流れています。平和な日常を一日でも早く訪れることを心から願っています。

侵攻により多くの市民が犠牲となり、また、ウクライナの人たちが守ってきた文化も崩れていき、大きな損失だと感じています。今回、ウクライナのことを知りたいと思い、パンにフォーカスして、どのようなパンがあるのかを調べてみました。興味を持って頂けたら嬉しいです。

【ポンチキ】ジャム(ブルーベリーほか)を包んだ丸型の揚げドーナツ。生地はふんわりとしている。揚げたあとに粉砂糖をまぶしているものもある。

【パンプシューカ】丸型の食事パン。ボルシチなどを浸して食べるそう。表面にニンニク油が塗ってあると、より美味しいとのこと。

【バトン】ハード系の食事パンでサーモン、サラダなどを乗せてオープンサンドとして食べることが多い。

【黒い食パン(黒パン)】ライ麦を使った食事パンで、クリームチーズを塗ったり、サンドイッチにして食べたりするそう。ドイツ、フィンランドでもよく見られる、寒い地域特有のパン。

【ジャイヴォロノク】ウクライナ語で「ひばり」を意味し、春を祝う柔らかなパン。ひばりに似せて成形し、焼き上げる。

【パスカ】レーズンやプルーンの入ったカップケーキ型の伝統的なパンで、パネトーネやパンドーロに近い。表面に模様を描いたりアイシングしたりと、デコレーションをすることもある。復活祭(イースター)の朝食に並ぶ。アメリカ、カナダ、イギリスなどにも伝わっている。

【カッテージチーズのサラダをのせたトースト】カッテージチーズ、フェタチーズ、トマト、にんにく、サワークリーム、黒胡椒、オリーブオイル、タイムなどを使ったサラダをパンの上に乗せて食べるサンドイッチ。

【オラディ(ウクライナ流パンケーキ)】ケフィア(ケフィール)という発酵乳でできたヨーグルトのようなものを使う。複数の乳酸菌と酵母を共生発酵させているのがヨーグルトとの違い。

ウクライナは国土の7割が農業地域で、小麦の生産が盛んなことはニュースなどで取り上げられる機会が多いです。日本でのパン用小麦としての輸入はアメリカやカナダ産が多いこともあって、ウクライナ産小麦を使うパン屋さんを見かけたことはありませんが、「欧州のパンかご」と呼ばれるほどで小麦の輸出は世界トップクラスです。食料需要に対する影響は大きく、日本でも半年で小麦の取引価格が17%ほど高くなりました。侵攻が長引くと、価格はもっと上がると言われています。

紛争や戦争が起こると、あらゆるものがいとも簡単に破壊されてしまいます。パン屋さんもなくなり、作り手もいなくなってしまいます。パンは一日にして成らず、何年もかけて、あるいは数百年をかけて、その地域の食として根付いているものだと考えます(もちろんパンに限った話ではないです)。争いは絶対に起こしてはなりません。ウクライナのパン文化に触れることで、関心を持って頂けたら幸いです。

ニュースを検索してみたところ、パンのトラ(愛知)、グルマンヴィタル(岐阜)、ベーカリー兎座LEPUS(東京)、ルーンカフェ(兵庫)などのパン屋さんがウクライナのパンを作ったりしているとのこと。近く行くことがあれば寄ってみてください。参考になったウェブサイトのリンクも貼っておくので、ぜひ読んでみてください。

2022.06.10

ライタープロフィール

パンロット(PAINLOT)はパン(PAIN)の水先案内人(PILOT)として、様々な「パン」に関する情報をシェアするためにスタートしたプロジェクト。京都、名古屋、東京などをを中心にパン屋さん巡りなどのパンイベントを開催。常日頃、パンに関わる文化や歴史的背景も研究しつつ活動中。ワンモニでは毎年12月にシュトレンとパンを楽しむイベントを主催しています。

PAINLOT[web site / twitter @painlot]